◇KODAK Gray Scale を使ったコントラストの調整方法
コダックのグレースケールについて、今までにいろいろなホームページ等で調べてきましたが、このグレースケールについての詳細な情報や、明確な目標値は存在しませんでした。ですが、その断片的に集めた情報を元にいろいろと検討した結果、デジタル写真研究所としてひとつの目標値が浮かび上がってきました。その経緯と数値、及びそこから導き出されたコントラストの補正値を公開したいと思います。


 ■始まりは…
私は常々デジタルカメラのコントラストは弱い(眠い)と感じていました。コントラストと一言で言っても、画像自体にハイライトやシャドーが無く、そのように見える場合もあります。では、本当にそれだけなんでしょうか?

私の場合はフィルムスキャナから始めたので、その複雑さは倍増でしたが…(笑)

難しいことを云わずに、見た目にいい感じに調整することは簡単なのですが、画像1枚1枚をいじっていたのでは効率が悪い。まあ、初めのうちはそれで良かったのですが、だんだん疑問を持つようになったのです。基準は無いのかと…

 ■コダックのグレースケール
そこで、銀塩カメラでの調整手法をいろいろと研究してみたところ、コダックのグレースケールに出会ったわけです。これは印刷物の濃度に合わせるための道具なのですが、印刷されているスケールは濃度「0.05」〜「1.9」となっており、この濃度(グラデーション)がモニタなりプリントできちんと再現されれば、正しいコントラストが表現できると考えたわけです。(もっとも、そう考えたは私だけではないですけど…)

ちなみに「M」が濃度「0.7」となっていて、18%グレーになります(正確には約20%)。それぞれのパッチは「0.1」づつ増えたり減ったりしています。カメラで言うところの露出「1/3EV」と等しいことになります。
《KODAK Gray Scale》
ここまでは添付されている資料に記載があったので簡単に判明しましたが、ではRGB値は?となると記載がありません。実はここからが大変だったのです。

 ■まずは「カラースペース」が大切
実はRGB値といっても、これだけでは色を特定できません。まず第一にカラースペースを決めることが重要です。同じRGB値でも、「sRGB」と「AdobeRGB」ではまったく違う色(主に明度と彩度など)になります。ここでは「sRGB」を基準に話を進めます。数値は後から他のカラースペースに変換することができますので、後で皆様の環境に合わせて数値を読み変えてください。

   カラースペースは「sRGB」

 ■「M」は18%グレーなのか?
いろいろと調べていくと、18%グレーとは濃度「0.75」であることが判明してきました。この数値を求めるにあたっては、濃度から計算する方法と反射率から計算する方法がありますが、基本的な計算式は一緒です。私は濃度から計算する方法を採用しました。

   18%グレーの濃度 = Log(255/(255*0.18)) = 0.75

ちなみに脇色彩写真研究所様のところでも、濃度「0.7」=約20%と定義されています。

 ■基準は「L*a*b*」カラーの「L*値」
さて、次にどのカラースペースでも使えるようにするためには基準が必要です。ここでは「L*a*b*」カラーの「L*値」を基準にします。これは脇色彩写真研究所様より数値が公表されているので、それを使いたいと思います。
 カラーパッチ
 L*値 96 52 18
次に先の「L*a*b*」の「L*値」を「sRGB」のRGB値に変換します。私はここで Photoshop を使いました。他のカラースペースの場合も同様に行えると思います。
 カラーパッチ
 sRGBのRGB値 243 124 44
となります。ですが「B」を「44」で設定してしまうと、とってもシャドーのしまりが無くなってしまうので、もう一工夫が必要です。そこでここでは「19」パッチがRGB値「11」になるように設定しました。これは印刷物において、RGB値が「10」以下になると人間の目では識別できない…と言ったことが一般的にいわれていますので、この数値を採用することにしました(私は好みで「19」をRGB値「8」としています)。

参考までに EPSON の「PRINT Image Matching U」による変換の場合、「19」がRGB値「4」となりました。
    ●最終目標値
 カラーパッチ 19
 L*値 96 52 3

 カラーパッチ 19
 sRGBのRGB値 243 124 11


 ■コダックのグレースケールを撮影するときの注意点
必ず撮影される光源下で撮影します。また、太陽光であれば、晴天と曇りなどで使い分けると良いかもしれません。それと、グレースケール自体はマット調になっているので問題は少ないのですが、できるだけ正面から撮影するようにした方がうまくいきます。ただしその場合、光が45度に当たるようにセッティングするのがコツです。

また、「M」が必ず「124」になるように露出を調整してください。EOS-1D の場合は 1/3EV 程度アンダーになるようですが、きっちり「124」が出ました。それと、マニュアルWBは必須です。

 ■Photoshop のトーンカーブ設定
あとは Photoshop のトーンカーブを作成すれば良いわけです。それぞれのパッチを「Ctrl」+「クリック」していき、出力の数値を先の目標値に設定すれば完了です。カーブを保存しておき、16bit 変換してから保存しておいたカーブを適応させれば、劣化の少ない補正が可能です。
    ■サンプルは EOS-1D
あと、マニュアルWBをきちんととってあると、グレースケールの「M」パッチを使いさらにグレーバランスの追い込みができます。ただし、きちんとマニュアルWBがとれていないとうまくいきません。

参考までに、私が作成したトーンカーブをダウンロードできるようにしてあります。

   → CANON EOS-1D 用トーンカーブのダウンロード
   → CANON EOS D30 用トーンカーブのダウンロード


 感想や要望がありましたら掲示板に書き込みをお願い致します。